新規開拓がなかなか進まない営業組織を動かす3つの原則

「もっと新規開拓をやってほしい」。
営業部長のこの言葉を、私は数えきれないほど耳にしてきました。やるべきことは明確です。新規のリストをつくり、架電し、アポイントを取り、商談を増やす。それだけの話です。本当にこれだけです。
しかし、現実はそう簡単ではありません。「わかってはいるんですが、なかなかできなくて」、そう言って、既存顧客ばかりを回っている営業担当があまりにも多いのです。そしてそんな営業メンバーを嘆く営業部長も少なくないのです。新規開拓が重要なのは誰もが理解している。それでも動けない。この現象は、業種や会社の規模を問わず、至るところで見られます。
なぜ「やればいい」とわかっているのに、できないのか。この問いを突き詰めると、多くの組織に共通する構造的な問題が見えてきます。それは、「行動を仕組みで支えるマネジメント」がないということです。
多くの営業責任者やマネジャーは、「モチベーションを高める」ことに力を入れます。このモチベーションという言葉はここ10年くらいで一気に市民権を得たような印象があります。営業会議で激励し、表彰制度をつくり、懇親会で士気を上げる。1on1も手を抜くことなく、ネガティブなフィードバックだけでなくポジティブな面にも言及。いや、ネガティブという表現も変えて「More」としてみてとにかく相手を認めるところからはじめようとする。もちろんそれも大切です。しかし、人間は一時的な気持ちでは動き続けられません。営業とは、結果がすぐに出ない仕事です。 特に新規開拓は、「断られる」ことが前提です。つまり、心理的に最もエネルギーを消耗する領域。だからこそ、「気持ち」ではなく「仕組み」で行動を支える必要があります。メンバーの気持ちに寄り添うだけでは新規開拓は進みません。メンバーのやる気なんかに向き合う必要はありません。
以前支援したある企業でも、同じような課題がありました。既存顧客のフォローは丁寧に行っているものの、新規開拓の件数が一向に伸びない。既存顧客からの要求ですから無視するわけにもいかず、時にクレーム対応に追われるとそれだけで一日が終わります。上司と一緒に訪問して謝罪をする。それだけで心身共に疲弊すると新規開拓に割く時間が残っていません。真摯に対応している姿を上司も見ているので確かにがんばってくれている、そんな情も入ってしまうのでしょう。いつまでたっても新規開拓は実行されていませんでした。営業部長も「わかってるんです。でも動かないんですよね」と苦笑いです。そこで私たちは、次の3つだけに絞って改革を始めました。
  1. 「行動目標を立てること」
  1. 「行動した結果を見える化すること」
  1. 「達成するまで目を離さないこと」
たったこれだけです。派手な施策も、複雑なツール導入もしていません。それでも、3か月後には新規開拓件数が2倍になり、受注数も増加しました。

■ 原則① 行動目標を立てる

最初にやるべきは、「行動の基準を明確にすること」です。「新規を増やそう」ではなく、「一日に100件架電」「月に20件アポ取得」といった行動レベルの目標を決める。ここで重要なのは、「数字が目的ではなく、動くためのリズムをつくるもの」だという意識です。多くの組織は、「受注目標」は掲げても「行動目標」は曖昧です。結果ばかりを追っても、行動の土台がなければ何も始まりません。「何件くらいに設定すれば良いかわからない」という声も聞こえてきますが、まずは本人に考えてもらい決めてもらいましょう。何かのエビデンスに基づいたものである必要はありません。まずは10件でも20件でも良いので決めることです。一旦のゴールを決めない限り永遠にゴールにたどり着けません。

■ 原則② 行動した結果を見える化する

次に必要なのは、「行動の見える化」です。 人間は、見えないものを続けることができません。日報やSFAの入力を目的化するのではなく、「自分の行動がどう変化しているか」「チームとしてどれくらい動けているか」をひと目で見える状態にすることが重要です。
例えば、個人ごとの新規架電数やアポイント数を週次で共有する。これだけでも現場の空気は変わります。「やっている人」と「やっていない人」が可視化されることで、自然と意識が変わるのです。また、SFAや世の中に出回っているツールは一切不要です。エクセルでも良いですし、なんなら紙でもいいです。おすすめはホワイトボードです。ホワイトボードに名前と目標の数字、そしてその日の行動結果としての数字を書き込む、これだけで十分です。ホワイトボードとマジックだけ準備すればいいです。

■ 原則③ 達成するまで目を離さない

そして最も重要なのが、「目を離さないこと」です。多くの改革が途中で止まるのは、この「最後の一手」が欠けているからです。マネジャーが最初だけ声をかけ、しばらくすると放置。営業会議で「どうなってる?」と聞くだけ。これでは、現場は「またすぐ終わるだろう」と冷めていきます。
行動を変えるには、「できるようになるまで」伴走し続けることです。言い換えれば、「やらせる」ではなく「やり切らせる」。その姿勢を上司が示すことで、チーム全体が「本気でやるんだ」と腹をくくります。今日の行動目標が仮に「架電数100件」だとしましょう。その時点での架電数を聞いてみて80件だとします。それならば100件になるまで、そのメンバーの横で座って待ちましょう。リモートワークで物理的に座れないなら、「100件かけ終わったらslackで教えて」と指示すればいいでしょう。設定した行動目標であるゴールテープの先に立って待っているイメージです。とにかくやりきらせる。どうしても達成できなかったら、その理由を確認しますし、どうしたら達成できたか、今後の改善施策まで決めてもらいます。そして次回は必ず達成しようといって約束してまたゴールテープの先に立ちましょう。
そんなことをしつこくやっていると、ある営業部長から「そこまでやるんですか?」と聞かれたことがあります。そこまでやります。そこまでやらなくて何が出来るんでしょうか?シンプルですが、これこそが管理の原点です。「マイクロマネジメントはメンバーは好まないんですよね」と言ってるうちは永遠に新規開拓どころか売上目標も達成しないでしょう。
 
営業マネジメントとは、数字を追うことではなく、行動を積み上げさせることです。そしてそのために最も重要なのは、マネジャーとしてのあなた自身のコミットです。メンバーの気持ちに寄り添うだけでは足りません。「やり切らせるまで現場に立つ」。この姿勢こそが、行動を変え、成果を生み出します。気持ちに寄り添う優しさよりも、やり切らせる覚悟。それが結果的に、メンバーを最も成長させ、組織を強くします。
「やればいい」と分かっていても動かないのは、仕組みがないから。だからこそ、仕組みで支え、仕組みで動かす。行動目標を立て、行動を見える化し、達成するまで目を離さない。
この3つを本気でやり抜くためには、営業責任者やマネジャー自身が最前線に立ち、「最後まで見届ける覚悟」を持つことが欠かせません。新規開拓が進まない原因は実はメンバーではなく管理する側にあるのです。あなたはの覚悟こそが営業組織を「やらせる組織」から「やり切る組織」へと変える原動力になります。あなたはゴールテープの向こうで立っていますか?