売上目標がない営業組織

「今月の目標は達成しましたか?」ご支援で入らせて頂くお客様先での最初の打ち合わせ時によく聞く質問です。 答えは二つのどちらかです。「達成しました」か「達成できませんでした」。本来はその2つしかないのですが、現実的にはもう一つの答えがあります。それは「そもそも目標がない」という状態です。
「営業していて目標がないなんて、そんなことある?」そう思う方もいるかもしれません。
しかし、私は多くの現場に入り込む中で、この「第三の状態」が想像以上に多いことを実感しています。もう少し正確にいうと、一応部の予算は期初に設定されているのでスプレッドシートを見返せばわかるが現場の営業担当レベルだと全く運用がなされておらず、達成しようという意識が希薄といった感じでしょうか。
月次での売上目標の達成の文化が全くないと、当然各種施策におけるKPIもありません。あってもさほど厳しく求められてもいないというケースが珍しくありません。展示会に出展してそこからのアポ獲得件数は何件か、交流会に参加したときの名刺交換枚数は何枚か、共催ウェビナーからのアポは何件か、、、営業活動の殆どは定量的に振り返ることが重量であることは言うまでもありません。
なぜ定量目標を設定しないのか?よくあるケースを紹介します。
「まずはやってみよう」と走り出す。
一見、スピード感があって良いように思えますが、実はこれが大きな落とし穴です。なぜなら、目標のない営業は「走っているようで、どこにも進んでいない」からです。目標というゴールがないわけですから、その結果が良いのか悪いのかも本来は判断できません。それにも関わらず、「アポが取れました!」とslackに投稿して無邪気にスタンプを押す。アポを取るなんて当然です。「アポ取れました!あと◯件で達成です!」ならわかります。
「試したことがないので妥当な目標数値がわからない」
一見すると最もなように聞こえるのですが、理由になりません。確かにやったことがなければ設定するのは難しいでしょう。しかし、本当に難しいのでしょうか?これまでに入ってきた問い合わせからは何件アポが取れましたか?それを確認すればアポ獲得率がわかりますが確認したのでしょうか?インバウンドリードで仮に30%のアポ獲得率ならば、その施策がアウトバウンド寄りであれば5%くらいのアポ獲得率と設定しておくかといったことは考えなかったのでしょうか?妥当な数値はわからなくても、おおよその値で問題なので設定することです。
「数値を置くとプレッシャーになりませんか」
プレッシャーになりますが何か?一体何を心配しているのでしょうか?初めての展示会出展でどれくらい反響や効果があるかなんてやってみないとわかりません。上手くいくかもしれませんし、失敗するかもしれません。そもそも立ち上げフェーズの組織であれば本当に立ち上がるかなど約束されていません。その事業立ち上げそのものにすでにプレッシャーがかかっているわけですし、そこに参加している限りはプレッシャーからは逃げられません。というか殆どは責任逃れでしかありません。堂々と立ち向かいましょう。
目標がない組織には残念ながら危機感がありません。目標がない中で営業活動を続けることで実は気付かないうちに生じている弊害も記載します。
「進捗が見えないので、改善ができない」
仮に月間1000万円の売上目標が課されていて着地が800万円だったとします。200万足りなかったわけですので、その原因を振り返ることで改善策が打てます。しかし、そうした目標がなければどうでしょうか?良いも悪いも判断ができませんので改善策どころではありません。改善せずして事業の成長はありません。
「成果が運頼みになる」
「たまたま受注できた」「たまたま紹介が来た」など、再現性のない成果が続きます。成長ではなく偶然です。毎月これからも偶然を期待するのでしょうか?
「営業担当者に成長実感が得られない」
目標がない、またはあっても達成への執念が希薄だと頑張っても達成感が得られません。達成感がない営業組織ほどつまらないものはありません。そして仕事がつまらないと例外なく人は去ります。
こうした目標がない、または目標達成が希薄な営業組織の存在を知ったのは実は最近のことではありません。私自身が会社に勤め人として働いていた頃からうっすら感じていました。当時から私は営業組織向けにシステムを営業していました。対面の殆どは社長や営業責任者でした。ヒアリングをする中で営業活動にコミットしていない、雰囲気が緩い、未達が続いているがその割には危機感もない、といった人たちをたくさん見てきて一つ不思議に思っていたことがあります。それは、そんな緩い営業組織がそれでも事業が継続できているのは何故だろうかということでした。私が勤務していた会社が売上目標の達成に非常に厳しい組織だったからか余計に不思議でした。しかし、そうしたゆるい組織の共通の特徴も同時に見えていました。それは、すでに確立したブランド力の高い商品やサービスがあるということです。つまりは安定的な売上が見込めるものがあるのでそこまで頑張らなくても会社は潰れないという状態なのです。
安定的に売上が見込める商品やサービスがあることは確かに素晴らしいです。先人の方々の努力の賜物でしょう。しかし、それが未来も続く保証などどこにもありません。本当に素晴らしい企業というのはそうした安定稼働な事業を太くしながらも、第二、第三の事業の柱を作るべく血眼になって駆けずり回っているはずです。
目標とは数字の話だけではありません。組織がどこへ向かうのかを示す「意志の可視化」こそが本質でしょう。 たとえ仮説でもいい。立ち上げ期なら、まずは仮説で構いません。というか事業そのものが大きな仮説検証です。目標を置いて、走って、振り返って、修正する。この繰り返しが、組織を強くしていきます。安定している今だからこそ、目標を置くべきです。安定している今だからこそ、危機感を持つべきです。
「今月の目標は達成しましたか?」
この問いに即答できないようであれば、まず立ち止まって考えてみてください。そもそも、あなたのチームには「目標」があるのか。その目標は、メンバー一人ひとりの中に生きているのか。数字は結果ではなく、意志の証です。目標を立てるという行為そのものが、組織の未来をつくります。