1on1をやって売れるようになった人は存在しない
「最近受注率が低下気味なので、相談に乗って頂けないでしょうか・・・?」とご連絡を頂いたのは人事系SaaSの会社の営業責任者からです。早速直近のKPIを把握したいので前期から先月末までのリード数、アポ数、商談数、受注数などがまとまったスプレッドシートを共有頂きました。
ざっと見たところ、確かに直近3ヶ月の受注率が低下気味です。ご連絡を頂いたのが夜遅い時間ということもあったので翌日に打ち合わせのミーティングをセットしたと同時に軽めのトーンで「ちなみに低下する受注率を改善するために現状で何か手を打っていたりするんでしょうか?」という質問をしたところ、「メンバーとの1on1を増やして課題を聞いたりするようには努めています」と。
ああ、これはまずい展開だ・・・と直感的に思いました。
「どんなチームにしたい?」、「今何に困っている?」とメンバーに問いかけたり、1on1で悩みを聞いたりすることは、経営やマネジメントにおいて欠かせない取り組みです。個人が尊重され、心理的安全性が高い組織ほどパフォーマンスが高まるとの主張はここ数年で一気に市民権を得ているのは事実です。しかし、営業組織の立ち上げや強化の現場に立ち会ってきた経験から言えば、受注率を始め成果が出ていない中で1on1をしても改善することはありません。売れていない段階で個人に向き合っても効果はほとんどありません。むしろ「なんとなく良いことをやっているけど、結局数字は伸びていない」という中途半端な状態を生み出すリスクさえあります。1on1を実施した結果売れるようになりました!という人などはいないのです。
営業現場で最も多い誤りは、このような「抽象的な理想の議論」に終始してしまうことです。これは昨今の働き方における多様な議論の弊害だと感じています。ほとんどのスタートアップの企業ではマネジャーがメンバーと1on1をすることはもはや当たり前と言わんばかりに実施していることでしょう。私がご支援させて頂く企業の中でも1on1を実施していない企業の方が少ないくらいです。
誤解を恐れずに言うと中途半端な1on1をしている時間があれば1件でも架電するなり商談するなりして受注に向けて行動量を増やしたほうがはるかにいいです。「その1on1を実施する目的はなんですか?」という問いに対して明確に答えられないならひとまず次の1on1は中止にした方が良いでしょう。
まずは「問題の把握」から始める。なぜ受注率が低下しているのか。受注率が低下しているのは特定のメンバーだけなのかどうなのか。
受注率が低下している人間が特定できたならその原因をさらに深ぼっていきます。とにかく最初に必要なのは現状の問題を具体的に把握することです。
割り当てられる商談数が不足しているのか、提案内容が顧客の課題とずれているのか、クロージングの際にふわっと終わらせてしまっているのか・・・。いくらでも振り返るポイントは見つかります。
また、こうした問題は必ずしも本人が自覚しているかというとそんなことはありません。むしろ自覚していないことのほうが多いでしょう。「最近あまり売れてないな・・・」くらいの認識しかないことがほとんどです。
ジュニアメンバーであればそもそもスキル不足ということも有りえます。入社半年でまだスキルも高くなく、場数も足りていないメンバーが成果が出ないのはある意味当然で本来であれば受注につながる営業スキル、商談スキルを習得するの一択です。1on1でお悩みを聞いても何一つ問題は解決されません。問題を正しく言語化し、それに対して「ではどう解決するか」という具体的アクションを出す。これに尽きます。
もう一つ、そのような組織に共通する根本的な問題があります。それは、「定量目標の達成こそが全て」という意識の希薄さです。
営業部で定量目標の意識が希薄なんてそんなことはありえないだろうと思われるかもしれませんが、残念ながらそうした組織が少なくないのが現実です。
営業組織においては、いくら「頑張っている」「皆人がいい」と言っても、数字を達成していなければ意味がありません。
月間◯件の商談を実施する、四半期で◯件受注する、年間でMRRを◯円伸ばす、こうした定量目標が明確に設定され、その達成に全員が責任を持つ。定量目標が明確になれば、達成しているかどうかも自ずと見える化されます。
今月10件の受注目標に対して結果は6件であれば、未達の原因をメンバーに考えさせます。
商談数が足りなかったのか、割り当てられる商談が展示会リードが多数だったからなのか、そもそも本人の実力不足なだけなのか、目標が高すぎただけなのか、など振り返るべきポイントは無数にあります。
こうした振り返りを自身だけで実施することが困難なのでマネジャーが入って一緒に振り返るという意味での1on1であればやるべきでしょう。
受注率が低下している、それと同時に売上も未達の状態である、そのような状況下においてあまりに「人」に向き合いすぎている組織が多いのが実情です。人に向き合うのが意味がないと言っているのではありません。まずは起こっている問題に目を向けましょうということなのです。ヒトではなくコトに向き合うのです。
「1on1している時間があれば営業してください。飛び込みでもテレアポでも何でも良いので売上につながるアクションを最優先してください」と口酸っぱく言うのはそういう意味なのです。
あなたはコトに向き合えていますか?
定量目標の達成に集中できていますか?