営業とは価値を変換することである

「商材やサービスの説明を丁寧にすれば、きっとわかってくれるはずだ」。
そう信じて営業に取り組んでいる経営者や創業社長の方も多いのではないでしょうか。
確かに、ある程度のスペックや特徴を伝えることは必要です。しかし、説明するだけで買ってくれるお客様は、ほとんど存在しません
なぜでしょうか。
それは、営業の本質が「情報提供」ではなく、「価値の変換」だからです。
「うちのサービスは、こういう人には絶対必要だと思ってるんです」
「この機能があれば、あの業界の課題はきっと解決できるはずです」
そう語る経営者の目は真剣で、自信に満ちていることが多いです。最近も会社員時代の実体験を振り返りながら現在のプロダクトを思いついた、いわば自分が欲しかったものを作ったと熱量たっぷりに込めて話を聞く機会がありました。
 
しかし、現場ではまったく売れない。話を聞いてくれても、契約に至らない。これは本当によくある光景です。よく言われますががニーズには種類ががあります。
  • 顕在ニーズ:本人が自覚している「困りごと」や「欲しいもの」
  • 潜在ニーズ:本人は気づいていないが、実は抱えている課題や不便さ
顕在ニーズにマッチした商材であれば、タイミングさえ合えばすんなり売れることもあります。金額や契約期間など多少の調整は必要かもしれませんが、基本的購入前提でお客様も交渉されます。
しかし、そのようなケースは少数派、いや例外と言っても良いかもしれません。多くの場合は潜在ニーズを掘り起こす、気づかせるというアプローチをすることになります。これはとても険しい道です。
「なかなか売れないんです」と相談されるとき、私はまず次の2つを見極めます。
  1. 商材やサービスそのものに問題があるのか?
  1. 営業のやり方に問題があるのか?
ここで注意してほしいのは、「売れない = 商材が悪い」と決めつけるのは早計だということです。
実際、多くのケースで、商材は十分に良いのに営業のアプローチに課題があるということが少なくありません。
良い商材であっても、それが「自分にとって価値のあるものだ」と相手に感じてもらえなければ、買ってはもらえません。
ここで重要になるのが、「価値の変換」という考え方です
例えば、バナナを例に考えてみましょう。もしバナナを売る場合、みなさんならどんな風に売りますか?
売る相手が「スポーツ選手」になら、そのままの状態で売れるかもしれません。栄養価やエネルギー補給の速さを訴求することも効果的でしょう。
では、「赤ちゃん」ならどうでしょうか?流石にそのままでは大きすぎて食べられないので、ピューレ状にするかジュースにしたほうが良いでしょう。
「20代の女性」に売るなら、「バナナスイーツ」「ヘルシーな間食」としての提案になるかもしれません。
同じバナナでも、相手によって「価値の形」が変わるのです。バナナという商品そのものは変わりませんが提供する形を変えるだけで文字通り価値も変換されるのです。
営業とは、「あなたにとってこの商品は、こういう価値になりますよ」と翻訳して伝える営みです。この「翻訳機能」こそが営業の本質であり、提案力なのです。営業の実際の現場ではバナナスイーツを赤ちゃんに売ろうとしたりしている人が残念ながら少なくないのです。
 
残念ながら、多くの営業トークは「自分目線の説明」で終わっています。
機能、スペック、実績、導入事例…。一通り話して「どうですか?」で終わってしまう。
しかし、それを聞いて「自分にとってどう役立つか」を想像できるお客様は、ほんの一部です。
多くの人は、「自分に関係があることだ」と腑に落ちなければ、行動に移しません
だからこそ、営業は相手の頭の中で価値が変換された状態を作らなければならないのです。
このプロセスを飛ばして「機能説明」で勝負しているうちは、なかなか成果にはつながりません。
 
ここまでお読みいただいておわかりのように、営業の役割は「説明すること」ではありません。
相手の状況を聞き、何に困っていて、どんな未来を望んでいるのかを知り、それにあわせて価値を変換して提示することです。
ところが、経営者の中にはこの「価値の変換」が必要であることに気づいていない方が少なくありません。自社のプロダクトやサービスを作って絶対に良いものだと信じ込んでしまってこと営業については意識を向けない人が圧倒的に多いのが実情です。資料を配って、商品を説明するだけで十分だと思い込んでしまっているのです。
営業がうまくいかないとき、原因を「気合が足りない」「量が足りない」と根性論に結びつけるケースもあります。
もちろん、行動量は重要ですが、それ以上に「変換する力」の設計とトレーニングが求められます。
では、どうやって価値の変換を考えるか。それは自社の商材やサービスの価値をまずは言葉にすることです。言葉がないことには翻訳のしようがありません。それを踏まえて、相手にどのような価値をもたらすことができるのかを考えるのです。この価値の言語化の重要性は私がご支援させて頂くお客様には口を酸っぱくしてお伝えしております。価値を言語化するのは決して簡単ではないですが、まずはこの言語化ができないと始まらないのです。
まずは「自分たちの営業は、価値を翻訳できているか?」
そう問いかけることから始めてみてはいかがでしょうか。