PDCAを回せているだけで十分良いです
「PDCAが回らない理由」——営業現場における計画と実行のズレを正す
「PDCAが大事です」という言葉は、営業の世界でもよく聞かれます。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)というサイクルを回すことが成果につながる、という理屈には誰もが納得しています。しかし、現場で本当にこれが回っている会社は、驚くほど少ないのが実情です。支援で入るクライアント様の社内で問題なく回せているケースは皆無と言っても過言ではありません。
なぜなのでしょうか。
理由はとてもシンプルです。「回っていない」のではなく、「最初から回すつもりすらない」からです。そして、仮に「回すつもりがある」としても、大抵の場合は形骸化してしまっています。
計画はある。でも、計画になっていない
多くの営業チームでは、月初に「計画」を立てています。たとえば、「今月は50件の新規商談をつくる」「◯◯業界を重点的に攻める」といった具合です。しかしこれは、厳密にいえば「目標」や「方針」であり、実行のための「計画」とは呼べません。
本来の計画とは、「誰が・いつ・どこに・どうやって」アプローチするのかを具体的に示した行動レベルのリストであるべきです。たとえば、
- 「このリストにある20社に今週中に初回架電をする」
- 「反応のあった企業に翌日中にメールフォローを入れる」
- 「接触できたら資料を送付して翌日に架電でフォローする」
といったような内容です。ここまで具体的に落とし込まれて、初めて「計画」は「実行可能」になります。逆にいえば、「今月は◯◯業界を攻める」とだけ決めているチームは、実質的には何も決まっていないのと同じなのです。
Check(評価)の習慣が、そもそもない
次に問題となるのが、「Check」のステップです。
本来であれば月初の営業日に、前月の結果を振り返るべきです。計画に対して、結果はどうだったのか。計画通り進んだのなら、その成功要因は何だったのか。逆に計画通りでなければ、どこにズレがあったのか。行動の量が足りなかったのか、ターゲットが曖昧だったのか、提案の質に課題があったのか。
しかし、こうした問いがなされることは少ないのが現状です。
よくあるのは、「商談数は達成できたからOK」「受注が取れなかったのは外部要因」といった表層的なコメントだけで片付けてしまうケースです。これでは、PDCAが回っているとは言えません。
評価とは、自分たちの仮説を「検証」することです。仮説が正しかったのか、間違っていたのか、次の一手にどう活かすのか。これがなければ、PDCAは単なる作業の繰り返しに過ぎません。
そもそも仮説をたてて営業していない、ということであればまずはそこから始める必要があると言えるでしょう。
マネジャーの意識がない組織では、絶対に回らない
PDCAがうまく回っていない組織には、ある共通点があります。
それは、マネジャーに「回す」意識がないことです。
メンバーがどれだけ真面目に取り組んでいても、計画と評価を設計・指導するマネジャーにその意識がなければ、サイクルは絶対に回りません。特にスタートアップや小規模企業では、営業マネジャーという役割が実質的に存在せず、経営トップが兼務しているケースが多いです。
このような場合、経営トップにPDCAを回す強い覚悟があるかどうかが明暗を分けます。営業メンバーに任せっきりで、数字だけを見て一喜一憂しているだけでは、PDCAは形だけになってしまいます。
本来、トップが果たすべき役割は、以下の3つです。
- 目標を明確にし、なぜそれを目指すのかをチームに伝えること
- 実行内容を具体的な行動レベルに落とし込み、進捗を日々確認すること
- 定期的に振り返りの時間を設け、改善の習慣を文化として根づかせること
これらは「権限のある人」にしかできない仕事です。だからこそ、PDCAの本質は経営者の意志にかかっているのです。
「目標」がないと、回らないのは当然
もうひとつ見落とされがちなポイントがあります。それは、「そもそも目標がない」チームの存在です。
目標がなければ、計画も評価も存在しません。あるいは、目標があっても「本当に注力すべきポイントに焦点が当たっていない」ことも多いです。たとえば、新規商談数ばかりを追いかけていて、肝心の成約率やリードの質には無頓着というケースです。
PDCAは、目標に対して手段を検証するサイクルです。目的地が曖昧なままでは、どれだけ車輪を回しても進んでいるかどうかがわかりません。ですから、「どこに向かって、どのように進んでいくのか」を明確にする目標設定が最も重要であり、最初に行うべきことなのです。
回すとは、「立て直し続けること」
最後に、PDCAを「回す」とは、決して順調にスムーズに進むことではありません。
正確には、「何度も立て直すこと」です。計画通りに進まないことのほうが圧倒的に多いからこそ、都度振り返り、修正し、再び挑戦する。その繰り返しによって、ようやく成果に近づいていきます。
つまり、PDCAを回すとは「粘り強く、何度も立て直す姿勢を持ち続けること」なのです。計画通りにいくのが当然だという前提で進めてしまうと、うまくいかなかった瞬間に止まってしまいます。大切なのは、失敗を糧にしてもう一度やり直すことです。この地道な営みこそが、成果を生み出す最大の力なのです。
「PDCAは大事です」と言うのは簡単です。しかし、実際にそれを回すためには、トップの意志、マネジメントの設計、行動レベルでの実行計画、地道な振り返りが欠かせません。
つまり、PDCAとは「文化」であり、「仕組み」であり、「習慣」です。偶然に回ることはありません。誰かが強い意志で「回す」と決めない限り、それは永遠に動き出しません。
あなたのチームは、PDCAを“使って”いますか?
それとも、PDCAを「言っているだけ」になってはいませんか?